2024/9海外ヘルスケアニュース

2024/9の海外におけるヘルスケアニュースをDr.心拍のコメントをつけてご紹介します。

目次

①性病クリニックでAIを使用してエムポックスと一般的な皮膚病変を区別する: アルゴリズムの開発と検証研究

メルボルン性病センターとWebリソースから収集したエムポックス病変画像と非エムポックス病変画像を含む 2,200 枚の画像を含むデータセットを使用。AI モデルをトレーニングするために、6 つの異なるディープラーニングアーキテクチャを含むディープラーニングアプローチを採用。

本研究では、AIベースの画像認識アルゴリズムを使用してエムポックスと一般的な皮膚病変を区別できる可能性を実証。95%という高い精度を誇るこのモデルは、クリニックのワークフロー管理と エムポックス感染の伝染防止に潜在的メリットがあることを示す。

解説

エムポックス(以前のサル痘)は、1970年にコンゴ民主共和国で初めて確認されたオルソポックスウイルスによる感染症で、中央アフリカから西アフリカにかけて流行しています。国内では4類感染症に指定されています。

2022年5月以降、エムポックスの流行国に渡航歴のない患者が世界中で報告され、2023年3月以降、東アジアや東南アジアでの報告が増加しています。日本では、2022年7月に初めての患者が確認され、2024年1月時点でも散発的な発生が続いています。

厚生労働省は、サーベイランス強化のために自治体や医療機関に対して情報提供を行い、エムポックスの疑い例がある場合には報告を依頼し、感染予防策についても情報発信しています。

コメント

コロナ終盤に感染が報告され、もしかしたらコロナのように拡がるかもしれないと当時不安に思うこともあったが、幸い私が診療する機会はなく経過。水疱や膿疱などの内容液や組織のPCRによって診断可能となり、皮膚病変の判別は非常に重要でありこのAIモデルにより早期診断、治療に結びつくとよいなと感じる。

参考

Journal of Medical Internet Research – Using AI to Differentiate Mpox From Common Skin Lesions in a Sexual Health Clinic: Algorithm Development and Validation Study (jmir.org)

②XP Health は従業員に手頃な視力ケアを提供するために 3,300 万ドルを獲得

XP Healthは健康管理やウェルネス関連のソリューションを提供している会社である。

XP Healthは、視力ケアに特化したデジタルプラットフォームを展開し、AIを活用して高品質の眼鏡を低コストで提供している。顧客はバーチャルで眼鏡を購入でき、小売価格の最大69%の節約が可能。XP Healthのプラットフォームは、顔認識技術を用いて個々のスタイルに合った眼鏡を推奨する。

同社は、パンデミック中に視力保険の代替として人気が高まり、最近ではシリーズBで3,320万ドルを調達した。XP Healthは、DocusignやCheggなどの企業と提携し、従業員に福利厚生として視力給付を提供している。モラエス氏は、XP Healthは伝統的な視力保険プロバイダーとは異なり、企業の利益を重視する新しいモデルを提供していると述べている。

コメント

視力ケアに特化したデジタルプラットフォームというものがあるのかと正直驚いた。アメリカでは物価が高く、また医療保険が日本と違って皆保険ではないため視力ケアに関して眼科に受診というのが非常にハードルが高いのだろうと推測する。

参考

XP Health grabs $33M to bring employees more affordable vision care | TechCrunch

③Neurode はウェアラブルヘッドバンドを通じてADHDの症状を治療および追跡する

2020年の調査によると、注意欠陥多動性障害(ADHD)は世界中で3億6,600万人以上の成人に影響を与えており、主な治療法はアデロールやリタリンなどの覚醒剤ですが、これら以外のライフスタイルの変更などの代替手段は限られる。

シドニーのスタートアップNeurodeは、ADHDの症状を追跡し治療するための新しいウェアラブルヘッドバンドを開発。このヘッドバンドは、1日20分の着用で前頭前野に軽い電気刺激を与え、脳のバランスを整えることを目指す。刺激の感覚は個人差がある。

機器を小型化してコストを大幅に削減する方法を見つけNeurodeは2021年に設立され、臨床試験資金として350万ドルを調達。現在、プライベートベータ版で利用可能で、将来的にはFDA承認を目指している。

Neurodeのアプローチは、家庭で使用できる小型の脳刺激装置を提供し、ADHD以外の認知機能低下やうつ病などにも応用可能としている。他のADHD治療支援スタートアップもあるが、Neurodeの技術は特に注目されている。

コメント

ADHDに対して薬物治療以外のアプローチが試されているが、現状なかなか難しい傾向にある。まだFDA認可が取れていないもののウェアラブルデバイスによってより多くのデータが蓄積され、治療に活かされると良いなと考える。

参考

Neurode wants to treat and track ADHD symptoms through a wearable headband | TechCrunch

④女性と医療業界のホルモンに関する知識のギャップを埋める手助けをするMira

Miraは、女性が尿中のホルモンレベルを家庭で検査できる手のひらサイズの装置を提供し、そのデータをアプリで解読して妊娠の最適なタイミングを計画したり、潜在的な問題を医師に相談する時期を把握するのに役立つ。

Fitbitのような健康トラッカーは多く存在する一方で、女性ホルモンの追跡は遅れていると感じ、家庭用検査機器としてMiraを開発した。

Miraは単なるIoT消費者向けデバイスではなく、匿名化されたデータを用いて女性の健康に関する情報のデータベースを構築することを目指している。Kang氏は、女性が自分の体を理解し、コントロールできるようになることを目標としている。

コメント

フェムテックに分類されるデバイスと考えるがホルモンを尿の検体で検査できるため非侵襲的。一方で妊娠最適なタイミングをはかる方法としては基礎体温などが既にあり、その差別化が気になるところ。

参考

Mira is helping fill the hormone knowledge gap for women and the medical industry | TechCrunch

⑤Oura が代謝健康スタートアップ Veri を買収

Oura Ring 4の発売が間近であるとされる中、OuraはヘルシンキのスタートアップVeriを買収したと発表した。Veriは血糖値を表示するだけでなく、適切な食品や習慣を提案し、血糖値の安定や健康の改善をサポートするプラットフォームを提供する。

この発表は、Dexcomが持続血糖モニター「Stelo」を発売した直後で、Abbott Laboratoriesも「Lingo」デバイスを発売した後に行われた。これにより、市販の血糖モニター市場が拡大し、個人の健康管理が進むと予想されている。

VeriのプラットフォームはOuraのサービスに統合され、2024年末までにVeriブランドは廃止される予定。将来的にOuraリングに血糖モニタリング機能が組み込まれるかについては現時点では不明だが、非侵襲性の血糖値検出方法の可能性が検討されている。

コメント

近年血糖測定デバイスの発展が目覚ましい。Oura RingユーザーとしてはOura Ring 4の発売が待ち遠しいものの、非侵襲性の血糖値測定が可能となればさらに個人の健康情報の取得ができ、そのデータ活用も興味深い。

参考

Oura has acquired metabolic health startup Veri | TechCrunch

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この記事を書いた人

呼吸器内科の勤務医として喘息やCOPD、肺がんから感染症まで地域の基幹病院で幅広く診療している。最近は、医師の働き方改革という名ばかりの施策に不安を抱え、多様化する医師のキャリア形成に関する発信と活動を行っている。また、運営側として関わる一般社団法人 正しい知識を広める会の医師200名と連携しながら、臨床現場の知見や課題感を生かしてヘルスケアビジネスに取り組んでいる。

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