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低被曝な胸部X線暗視野画像でCOPD患者の肺気腫検出が可能!?:Cadetto.jp (nikkeibp.co.jp)
今回紹介するのは、COPD患者における肺気腫の検出および定量化のための胸部X線暗視野画像における診断精度に関する研究の報告です1)。
医療用画像処理技術の進歩により、詳細な診断情報を得ることが可能になりましたが、呼吸器疾患の早期発見には低線量で高速かつ安価な方法が求められています。胸部X線暗視野画像はその可能性があり、従来の胸部X線写真と比べて高感度でありながら、CTに比べて被曝が少ないという特徴があります。
研究では、ドイツのミュンヘン工科大学で開発された新しい胸部X線暗視野画像システムを用い、77人のCOPD患者を対象にCT画像と比較して診断精度を評価しました。このシステムは、斜めからX線を照射し、組織によるX線の散乱の違いを検出することで微細な構造を観察する仕組みです。特に肺胞などの空気と組織の界面を詳細に観察できる点が特徴です。
研究結果では、暗視野画像が肺拡散容量と強い相関を示し、CT画像と一致する肺気腫の評価が可能であることが確認されました。また、この方法は従来の検査方法よりも優れた診断能を持つことが示唆されています。
一方で、この研究には限界も指摘されています。主に対象患者数が少ないことや、重度のCOPD患者では7秒間の息止めが難しいため撮影が困難なことが課題として挙げられています。しかし、胸部X線暗視野撮影法は、肺実質の構造情報を取得する新しい手段として期待され、COPD患者の診断においてCTに代わる低被曝の手法となる可能性を持っています。
今回、X線暗視野胸部画像という新しい撮影法における知見を紹介しました。日本は気軽にCTが撮影できる状況にありますが、やはり被曝の問題は無視できません。呼吸器内科医としては、喫煙歴がある方において診断の遅れが問題となっているCOPDを早期診断できる一助となるのではないかと期待しています。
文献
1)X-ray dark-field chest imaging for detection and quantification of emphysema in patients with chronic obstructive pulmonary disease: a diagnostic accuracy study – The Lancet Digital Health.
https://www.thelancet.com/journals/landig/article/PIIS2589-7500(21)00146-1/fulltext