メドピア株式会社石見陽先生、取締役会長就任への想い

この記事は、ヘルスケア企業のCXOなどその企業を代表する方にお話を伺い、その人物像を掘り下げていくシリーズになります。

今回は、先日創業20周年の節目に取締役会長に就任することを発表されたメドピア株式会社の石見陽先生にお話を伺いました。また12月12日、13日に開催されるHealthtech Summit 2024は今年10年目の開催ということでもありますので後半お伺いさせていただきます。

目次

あらためて自己紹介

①誰もがよく知る石見先生ではありますが、簡単に自己紹介いただけますでしょうか。

千葉県佐倉市出身で、長野県の信州大学医学部で6年間を過ごした後、1999年に東京女子医科大学循環器内科に入局しました。当時医師の起業家はほぼ皆無の状況で、2004年にメドピア株式会社を創業し、2014年に東証グロース(当時東証マザーズ)に上場しました。そして、先日発表させて頂いた通り、2024年12月に取締役会長に就任予定となっています。起業してからも医師であることにこだわり続けて、COVID-19前までは一週間に一度の外来を継続していました。今は、複数の医療法人の経営に関わっています。

Dr.心拍:私自身この活動を始めるまでは、医師と言えば病院勤務医か開業医というイメージが強く、医師×起業家という方にお会いしたことがほとんどなかったので石見先生のように周囲に医師起業家がほぼ皆無の状況で起業されたことを非常にチャレンジングで、また尊敬しています。上場後も比較的最近まで外来診療もしていたとは驚きですね。現場で働く医師としては、現場を常に知っていてくれるという安心感もあります。

メドピア株式会社のVision

②メドピア株式会社のVisionを教えてください。

“Supporting Doctors, Helping Patients.”をMission(会社の出発点)として、集合知により医療を再発明する、ことをVision(会社が目指すゴール)としています。

取締役会長人事の構想

③取締役会長に就任おめでとうございます。

率直に驚きもあったのですが、いつ頃から取締役会長への人事を構想していたのでしょうか?また、このような人事を構想するにあたってロールモデルとなる方がいらっしゃったのでしょうか。

20年間経営してきている中で、自分なりの経営スタイルを模索してきました。もちろん、重要な意思決定、もしくは右脳的な感性の世界、については社長としての意思決定を優先させてもらうことを意識しますが、それ以外の日常の執行部分については比較的幹部やメンバーに任せることが多いです。その意味では、今回の構想については1年前から自分の中でイメージはしていて、新体制でしっかりと経営判断ができ、今までよりさらにスピード感を出すことができると確信したために意思決定しました。ベンチャーにとって、創業者からどのように次世代にバトンを渡すか?というのは大変大きな課題で、正直に言って成功している事例は少ないです。その点でロールモデルは特にいなかったですね。私は自分でも他人でも、肩書で何かを判断することはしないようにしているので、シンプルに役割の変更と捉えています。

Dr.心拍:「創業者からどのように次世代にバトンを渡すか?」という課題は確かに難しいですね。創業者から引き継いだものの…という話を時折聞いたりもしますので、今回石見先生は1年前から構想し、そのバトンをしっかりと渡すために新体制への移行への確信が得られたため実行されたのですね。

取締役会長となって新しいステージへ

④取締役会長になって成し遂げたいことはどんなことでしょうか?

「会長」というと引退を連想される方もいるかもしれませんが、そのような意図はなくて、個々の経営陣がより得意な領域で貢献できる体制への変化です。そのため、変わらず上記Missionにもとづき、様々なサービスを世の中に展開していくことによる社会貢献を志向していきます。個人としても、理念の社内・社外への更なる浸透、医療関係者を含むステークホルダーとのより濃密なネットワーク構築、探索的な新規事業など、取り組むことの幅が増えていく感触を持っています。

Dr.心拍:取締役会長となってもさらに幅広いご活躍が楽しみですね。

創業から20年を振り返って

⑤あらためて創業時の想いをお聞かせください。また当時は上場やM&Aなど出口戦略は意識されていたのでしょうか。

Doctorepreneur(=医師起業家)として、民間の立場でMissionにもとづき、様々なサービスを世の中に展開していくことにより、社会貢献をしていきたいと考えて起業しました。周囲に医師兼起業家はいない中、他の業界の起業家に色々と教えてもらいながらここまできました。出口戦略と良く言いますが、私の場合は出口、というよりは「きちんとガバナンスのきいた公的な会社になる」ためのIPOという認識で、設立3期目からこの方向性のもと、仲間集めをしてきました。

創業メンバーとの出会い

⑥創業メンバーとの出会いについて、またどうして一緒に歩んでいこうと考えたのでしょうか?

当初は義弟と戦略コンサルタントの3名でスタートしました。何より信頼できるメンバーであることが大事で、今は二人とも当社を離れていますが、長年の信頼関係を前提に別の形で関係は継続しています。

「人」との出会い

⑦20年の間、様々な「人」の入れ替わりがあったと思います。特に印象に残っている方をその理由とともにご紹介ください。

実は創業年(2004年)の3月に長男が誕生しています。その長男が二十歳になり、会社も20周年を迎えられたことはとても感慨深いものがあります。最近では、自分が今までにお会いした素晴らしい人々と共に時間を過ごすこともあり、将来が楽しみです。

Dr.心拍:創業年にお子さんが誕生し、今二十歳を迎えられたというのは非常に感慨深いですね。節目節目に大切なイベントが重なっているのも何かご縁があるのかもしれませんね。

子供の頃の夢は?

⑧子供の頃の夢を教えてください。またどのような子供だったのでしょうか?

野球選手(だったと思います)。子供時代は、グループには所属するが、物静かでグループ内の端っこにいるようなタイプの子どもでした。

Dr.心拍:これは意外です!リーダーシップをしっかり取られているので、当時からグループの中心にいるのではというイメージでおりました。

人生の中のターニングポイント

⑨人生の中のターニングポイントについて教えてください。

今思うと、医学部在学中に流れでバドミントン部の主将を務めさせていただいたのがターニングポイントになった気がします。リーダーシップを発揮することの難しさと喜びを感じましたし、まずは自分がしっかりと動いてみる、というスタイルを学びました。

Dr.心拍:この時期くらいから才能を開花させていらっしゃったのですね。

メドピアの主要なサービスについて

⑩メドピア株式会社の主なサービスについて教えてください。また、これまで展開してきた事業でうまくいったと思える事業と、逆にこれは失敗だったなと思う事業を理由とともに教えてください。

当社の事業は、医師PF(プラットフォーム)事業と医療機関支援PF事業の2つに分けられます。医師PF事業として14年間展開している薬剤評価掲示板については、スタート当初、製薬業界にかなりのハレーションが発生しましたが、丁寧に説明を続けていくことで徐々に受け入れて頂き、今に続く当社成長の礎となりました。失敗事業については無限に失敗をしてきているので、選ぶことはできませんが、当社の課題として共通していると思っているのは、やりきれていない感があるということ。新規事業を生み出し、改善し、世の中に定着させていくためには、圧倒的な熱量とその継続、忍耐力が大事だと痛感しています。

課題感について

⑪現状における課題感は何かありますか?

引き続き課題ばかりですが、前期の構造改革期を受けて、マネジメントの強化、組織の強化が課題であり重点的に取り組む目標です。

10年目を迎えるHealthtech Summit 2024

⑫今年10周年を迎えるHealthtech Summit 2024について伺います。

どのような想いで開催し始めたのでしょうか。

2008年頃にアメリカのシリコンバレーで参加したHealth 2.0というイベントが原点です。アメリカではヘルステック業界のエコシステムがしっかりと構築されていて、プレイヤーの層が厚い。それと比較すると日本ではヘルステックという言葉もなかった頃で、一企業を超えて、日本のヘルステック・エコシステムを構築したい、という想いでスタートしました。エコシステムは何を指しているかというと、新旧大小問わず、多くの企業がヘルスケア業界への貢献を目指し建設的に競争を行い、失敗を繰り返しながら、場合によっては再チャレンジも認められる世界のことになります。このエコシステムの成立のためには、①チャレンジの数が多いこと。②exitの成功事例があること。③そして、仮にIPO、M&Aができなくて一回失敗したとしても再チャレンジが許される環境が整っていること。④exitした先輩経営者が後輩の育成にコミットすることが必要だと思っています。Healthtech Summitをそのような場に活用してくれると嬉しいですね。特にヘルステック業界は現場感が大事なので、医療現場に立っている医師や医療従事者に是非参加頂きたいと思っています。

Healthtech Summit 2024についてはこちら:https://healthtechsummit.jp/

Dr.心拍:ありがとうございます。個人的にはこのような会に医療現場に立っている医療従事者を巻き込めたらもっと解像度が高くなるのではと期待していますのでそのようなコメント非常に嬉しい限りです。ぜひいつか自身も登壇できたらと夢を見ています。

Healthtech Summit 2024のおすすめは?

⑬今年10周年ですが、おすすめポイントはありますか?

本年はテーマを”A Decade & Ahead”としました。それぞれ2つのセッション(Decade, Ahead)に分割したので、それぞれをご覧頂くことで、この10年間の振り返りと、今後10年間を展望するようなインスピレーションを感じる場を提供したいと考えています。

Dr.心拍:面白い視点ですね!自分も参加するので楽しみにしています。

エコシステムの構築のためには?

⑭ヘルステック領域のエコシステムの構築には、チャレンジャーを増やすこと、そして失敗した人が再チャレンジできることが挙げられています。ヘルステックサムではそのチャレンジを増やす場を提供する一方で、失敗した人が再チャレンジできるという点ではいかがでしょうか。また今後再チャレンジできるような環境を整えるためにどのような取り組みをしていきたいかなどを教えていただけますでしょうか。

エコシステムの構築は始まったばかりです。ご指摘通り、失敗した人が再チャレンジできる、というポイントはとても重要です。その意味でも、なぜ、どのポイント・タイミングで失敗したのか?できる限り皆で振り返っていくべきだし、各セッションにそのような要素を散りばめているつもりです。起業家の苦闘など、本音を聞ける場所がHealthtech Summitでありたいと思っています。私がオフレコセッションとして企画している「Doctorepreneurセッション」では失敗ではなく、IPO, M&AなどExitを経験した医師起業家が本音を語る場にしているので楽しみにして欲しいです。

Dr.心拍:まさにオフレコセッションをチェックしていて現地で拝聴予定です。やはり、本音が重要ですよね。

Healthtech Summitの今後の展望

⑮来年以降もHealthtech Summitは継続予定でしょうか?Healthtech Summitが目指す今後のVisionについて教えてください。

現時点では継続予定ですが、常にあり方は変化させてきましたし、来年以降も本質的な価値提供のために皆さんへどのような場を用意するか?その届け方は考えていきたいです。

最後に

⑯メドピア株式会社の今後の展望についてお聞かせください。記事を読んだ方へ何かメッセージをいただけると嬉しいです。

中期経営計画にて開示している通り、これから3年間はプラットフォーム強化期間になります。私は新たに設けられる会長職となりますが、逆に医療関係者・製薬企業のトップ層の方々などとのコラボレーションを構想しやすい立場になりました。当社内でチャレンジしたい人も含めて気軽に私宛に連絡をもらえると嬉しいです。

Dr.心拍:この度はメディア「Dr.心拍のヘルスケア最前線」への記事掲載においてご協力いただきありがとうございます。ぜひこの記事を読まれた方の新しいチャレンジやキャリアに役立つことと思います。

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この記事を書いた人

呼吸器内科の勤務医とライター、ヘルスケアビジネスに取り組んでいる。多様化する医師のキャリア形成とそれを実現するための「複業」に関する発信と活動を行っている。
ヘルスケアに関わる情報発信と人をつなぐことを目的としたメディア「Dr.心拍のヘルスケア最前線」を2024年9月リリース。
肺がんコミュニティや医師キャリアコミュニティを運営。
各種医療メディアで本業知見を生かした企画立案および連載記事の執筆、医療アプリ監修やAI画像診断アドバイザー、また、ヘルステック関連スタートアップ企業に対する事業提案などのコンサル業務を複数行う。
事業を一緒に考えて歩むことを活動目的としている。

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