mRNAワクチン技術がもたらす感染症対策

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呼吸器診療が専門の総合病院で勤務しつつ、ヘルスケアビジネスにも取り組むDr.心拍氏が、医療DXに関わるニュースや論文に率直にコメントします。

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対象のニュース

ノーベル賞受賞のmRNA技術は世界に何をもたらしたか?

メッセンジャーRNA(mRNA)技術の研究で、新型コロナウイルス感染症ワクチンへの道を開いたことで極めて高い評価を受けた2人の科学者が先日、ノーベル生理学・医学賞を受賞した。ペンシルベニア大学のカタリン・カリコ特任教授とドリュー・ワイスマン教授は、mRNAが炎症反応を引き起こすのを防ぐためにmRNAを調整する方法を発見した。2005年に初めて発表された彼らの発見は、何百万もの命を救ったワクチン接種戦略の一端を担った、モデルナとファイザー/バイオンテックによるmRNAワクチン開発の鍵となったのである。(後略)

このニュースに着目した理由

2020年から始まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との闘いにおいて、mRNAワクチンであるコロナワクチンの開発はその収束に大きく貢献してくれたと感じている。当初未知のウイルスとして1例目を経験したときの脅威を思い出し、未知のウイルス感染症が発生したときに、その解決の一手段としてワクチン開発が進んだことは大きな一歩であったと感じている。今回のニュースを見て、あらためてこのワクチン開発技術がいかに重要であったかと思い出し、このニュースに関心を持った。

私の見解

ワクチンについては、専門外であったためあまり詳しい知見をもっていないものの、最初はmRNAワクチン自体に一定の反ワクチン層が出てきてSNSでは炎上していたりもした。一方で確実にワクチン接種が進むことで目の前のCOVID-19患者の診療においてもなんとか収束してくれるのではないかという希望が持て、実際に少しずつ日常に戻れたという安堵感をもたらしてくれた。医療従事者も日常を取り戻したいし、やっと取り戻せたのだ。とても感慨深い。

日常臨床への生かし方

mRNAワクチンという技術はコロナワクチンだけではなく、小児で入院につながるようなRSウイルスに対するワクチン開発にも生かされている。また、インフルエンザワクチンに関しても、より迅速に製造することで、流行株に合わせたワクチンが毎年開発されることを期待したい。そうすることで、患者さんからの「今年のワクチンは当たる(株が合っている)のか?」という疑問にもポジティブに答えられるようになるかもしれない。様々な感染症に対するワクチン開発に生かすことができるというこの技術は、今後の感染症対策に大きな変化をもたらすと感じている。

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この記事を書いた人

呼吸器内科の勤務医として喘息やCOPD、肺がんから感染症まで地域の基幹病院で幅広く診療している。最近は、医師の働き方改革という名ばかりの施策に不安を抱え、多様化する医師のキャリア形成に関する発信と活動を行っている。また、運営側として関わる一般社団法人 正しい知識を広める会の医師200名と連携しながら、臨床現場の知見や課題感を生かしてヘルスケアビジネスに取り組んでいる。

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