完全非接触で呼吸不全を検知できる未来

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完全非接触で呼吸不全を検知できる未来 | m3.com AI Lab

呼吸器診療が専門の総合病院で勤務しつつ、ヘルスケアビジネスにも取り組むDr.心拍氏が、医療DXに関わるニュースや論文に率直にコメントします。

目次

対象のニュース

Wi-Fi信号の深層学習で呼吸不全検知の可能性 米の研究

Wi-Fiの電波信号を深層学習で解析することで、室内にいるヒトの呼吸状態を把握できる可能性が出てきた。米の政府系研究機関が、既存のWi-Fiルーターの様々な信号で検証し、高精度に検出できることを確かめたという。(後略)

このニュースに着目した理由

呼吸器分野での遠隔モニタリングに関する研究では、SpO2などをもとに呼吸状態を評価する試みがなされてきた。これまでの試みでは、パルスオキシメーターや遠隔聴診器など何らかの接触を必要とするデバイスが必要であった。しかし今回は、日常的に使用するWi-Fi に注目した呼吸不全検知であり、完全非接触型ということで新しい試みと感じ、このニュースに着目した。

私の見解

今回の研究では、インターネット無線接続のためのWi-Fiルーターに着目している。通常、機器との接続状態把握のための信号を発信し、その解析を行うが、それを応用して患者の呼吸状態、具体的には胸郭の動きをとらえた信号を解析している。その信号を深層学習で学習し、呼吸状態を検出できる「BreatheSmart」というアルゴリズムを開発した。

これまでは接触型のデバイスで得られたデータをもとに評価することが多かったが、この手法によりまた違った視点で呼吸状態が評価できる可能性が期待できると考えられる。

日常臨床への生かし方

さらなるデータの蓄積が待たれるものの、既存の接触型のデバイスによるモニタリングと併せて解析することでさらに正確な評価ができるようになるのではないかと考えられる。

また今回の方法は呼吸状態だけでなく、循環器や脳神経系、運動器など他分野の評価にも応用が可能と考えられる。例えば、音声指示に対する運動器の評価にも使えるのではないだろうか。もちろん、動画があれば評価もある程度可能だが、遠隔ならではの評価において違った視点からの情報が得られるかもしれない。今後のこの研究手法の応用に期待したい。

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この記事を書いた人

呼吸器内科の勤務医として喘息やCOPD、肺がんから感染症まで地域の基幹病院で幅広く診療している。最近は、医師の働き方改革という名ばかりの施策に不安を抱え、多様化する医師のキャリア形成に関する発信と活動を行っている。また、運営側として関わる一般社団法人 正しい知識を広める会の医師200名と連携しながら、臨床現場の知見や課題感を生かしてヘルスケアビジネスに取り組んでいる。

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