Dr.心拍:今回は地域の基幹病院の消化器内科部長兼内視鏡センター長を務められ、現在は、わだ内科・胃と腸クリニックの院長の和田蔵人をお招きして、PSPの取り組みをお話できればと思います。
和田先生、簡単に自己紹介をお願いできますでしょうか。
和田先生:わだ内科・胃と腸クリニック院長の和田蔵人と申します。2023年1月に大分県大分市で実家のクリニックを継承開業しました。継承前は大分大学の消化器内科の医局に所属し、県内の複数の基幹病院で勤務しました。
また実家のクリニックはもともとは一般内科を中心としておりましたが、継承後は私の専門である消化器内科の患者さんも数多く診察しております。
IBDの疾患と患者像
今回「IBDノート」を取り上げてみようと思いますが、IBDという疾患と患者像について簡単に教えてください。
和田先生:IBDは炎症性腸疾患のことで、主に潰瘍性大腸炎とクローン病の2つの疾患を指します。それぞれ厚生労働省が定める難病に指定されており、遺伝的な要因などが関与すると言われていますが、原因は完全には解明されていません。
潰瘍性大腸炎は、主に大腸に炎症と潰瘍を引き起こす病気で、腹痛や下痢、血便などの症状が特徴的です。対してクローン病は、消化管のどの部分にも炎症が生じる可能性がある病気で、腹痛や下痢が主な症状です。
患者像としては、潰瘍性大腸炎は若年者〜高齢者まで幅広い年代で、クローン病は若年者を中心に発症します。どちらも再燃と寛解を繰り返す慢性疾患のため、長期的な治療が必要でQOLに大きな影響を与えることもあります。
IBDの治療における課題感
IBDを治療するにあたって、何か課題感のようなものはありますでしょうか?
和田先生:潰瘍性大腸炎、クローン病の治療は近年飛躍的に進化しており、生物学的製剤を含めた多くの新薬が開発、発売されています。以前と比較して重症化する頻度は減少し、長期の寛解維持も可能となりました。
一方で患者数は近年増加傾向にあり、IBD診療に不慣れな医師が治療を担当する機会も増えています。その結果、適切な治療法が選択されず患者さんに不利益が生じたケースを目にすることもあります。それぞれの疾患に治療指針がありますのでIBD診療を行う以上は最低限目を通し、新規薬剤に関しては積極的に情報収集すべきだと思います。
IBDノートへ本音で切り込む!
それでは今回取りあげる「IBDノート」については専門医として診療に当たっている立場としてどのような印象をお持ちでしょうか。メリット、デメリットなど率直にコメントいただければと思います。
和田先生:まず症状の記録機能に関してですが、活動期の場合には症状の程度が大切になってきますので、日々記録いただくことで視覚化されるのは、診療を行う上で非常に助かります。またカテゴリー別によくある質問がまとめられており、患者さんが自身の疾患の理解を深めることもできると思いました。その他近くのトイレを検索することができたり、かゆい所に手が届くという印象を受けました。
気になった部分としては病院を探す機能で、消化器科を標榜している病院・クリニックをすべて拾い上げていることです。中には専門外で、IBD診療に不慣れな医療機関が含まれている場合もあります。例えば消化器病専門医の在籍の有無での拾い上げや有無の記載があればより親切かと思いました。
ただし患者さん向けのアプリとしては記録や情報という意味で非常に有用だと思い、私の担当している患者さんにも早速紹介してみようと思います。
最後に
さて、今回は消化器病専門医の和田先生にIBDノートの取り組みについて解説いただきました。まだまだPSPの取り組みは限定的だと思いますので我々医師も情報収集していく必要があると思いました。