不妊治療のための臍部周辺装着型デバイスと基礎体温データの研究開発
コロナ禍において、一番敏感になっている症状は何でしょうか?それは「発熱」があるかどうかということです。病院やクリニックの入り口にはスタッフが配置されて一人一人体温を測定し、「発熱」がないかチェックしています。もし高熱があれば、通常の外来受診はできず、発熱外来などの通常診療とは動線を分けての対応になるかもしれません。コロナ禍においては、熱があるというだけで受診拒否されたなんて話題もありました。
これは医療においてだけではありません。スーパーなど店舗の入り口にもスタッフあるいは体温感知センサーなどが置かれていて、発熱がある場合には入店をお断りされるかもしれません。これだけ感染が拡大していると、やむを得ないのかもしれませんが、生活しにくい世の中になってしまいました。
コロナ禍における「発熱」は37.5℃以上として扱われ、実際の医療現場では37℃台であればやや警戒されて発熱外来対応している医療機関もあるでしょう。しかしながら、医療機関に受診する方の中では、様々な病気が原因で常日頃から熱があるという方も珍しくありません。がんなどの悪性腫瘍やリウマチなどの膠原病、また慢性感染症などで微熱がある方もいらっしゃいます。
また、もともと平熱が35℃台で低めだという方もいらっしゃることから一概に何度以上なら発熱とも定義しにくいということもあります。外来に受診された患者さんが、36℃台のため、「熱はないですね。」と我々が言うと、患者さんから、「平熱は35℃くらいだからかなり熱があって辛いんです。」なんていわれることもあります。このように、そもそも人の体温には、平熱が異なるように個人差があるのです。また日内変動などもありますから、体温という一つのバイタルサインをとっても解釈が難しいと感じています。
臨床の現場では体温計測は、外来では1回測定するのみですし、入院患者さんであれば、1日1回または3回測定のような医師の指示のもとに計測していますが、体温というのは変動するため、計測のタイミングによって結果が多少変動してしまいます。やはり、体温測定や記録自体はマニュアル的な操作で行っているため、手間になると同時にその継続的な変動をうまく捉えることは難しいのが現状です。 またこの5年ほどで、ICT技術やセンサー、活動量計の普及から、継続的な温度計測の方法や分析が広がりを見せ、大手精密機器メーカーからもセルフモニタリングツールとしてサービスが提供されたりしました。
そんな中、直腸温(深部体温)と臍部周辺温度の相関性を確認し、自社で開発中のウェアラブルデバイスで取得したデータを元に体温変動の研究・解析を実施する研究開発型ベンチャーである株式会社MEDITA(旧:株式会社HERBIO)の存在を知りました。
MEDITA社は、体温を軸とした研究により重きを置き、その研究から導き出された結果をテクノロジーによってサービス化することを目指しています。基礎体温管理アプリであるHERBIOを女性のためのサポートツールとして開発しています。
また、不妊治療のための臍部周辺装着型デバイスと基礎体温データの研究開発と事業化のために、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構が実施した、2020年度「研究開発型スタートアップ支援事業/シード期の研究開発型スタートアップに対する事業化支援」に係る公募において、採択されており、事業への注目とともに事業の実現化に向けて評価されていることがわかります。女性向けのサポートツール以外に、熱中症対策支援サービスなどにも研究とテクノロジーを用いて注力しています。
最後に、コロナ禍で「体温」に敏感にならざるを得ない中で、MEDITA社の体温に関する研究やウェラブルデバイスの開発により、医療現場あるいは日常生活に根差す新しい知見がこれから少しずつ発表されるのではないでしょうか。ビジネスとして定着するためには、幾多の苦難があり、関係者の皆様の想いと努力に深い敬意を表しつつ、今後の研究・開発にも期待しています。
(了)
【出典】
- 株式会社MEDITA(旧:株式会社HERBIO) ウェブサイト: https://herbio.co.jp/ (株式会社HERBIOは、株式会社MEDITAへ、社名を変更いたしました。)
- 厚生労働省 「新型コロナウイルス感染症診療の手引き第5版」 000785119.pdf (mhlw.go.jp)
この原稿の執筆に際し、掲載企業からの謝礼は受けとっていません。
株式会社シーエムプラス「LSMIP」から許諾を得て転載する。
ウェアラブルセンサーによる体温変動の研究開発を行うMEDITA(旧:HERBIO) | LSMIP