CT画像から小細胞肺癌の治療反応性を予測できるか!?

日経メディカルで掲載された執筆記事の要約を公開します。医師の方は下記URLからお読みください。

CT画像から小細胞肺癌の治療反応性を予測できるか!?:Cadetto.jp (nikkeibp.co.jp)

小細胞肺癌(SCLC)患者における化学療法への反応性を、CT画像と人工知能(AI)を用いて予測することを目指した研究をご紹介します。

SCLCは、治療開始時には化学療法に感受性を示すものの、すぐに抵抗性を持ち進行が早いという特徴があります。一方で、非小細胞肺癌(NSCLC)には治療効果を予測できるバイオマーカーが複数存在しますが、SCLCではそれがないため、効果的な治療法の選択が難しいとされています。

この研究では、153人のSCLC患者を対象に、治療前のCT画像を使用して、化学療法に反応するかどうかを予測するAIモデルを構築しました。CT画像の腫瘍の輪郭を抽出し、そのテクスチャパターン(画像の模様)を解析して、ラジオミック・リスクスコア(RRS)を算出しました。RRSは、全生存期間(OS)や無増悪生存期間(PFS)と有意に関連しており、化学療法への反応性の予測にも有効であることが示されました。また、腫瘍とその周辺のCT画像に特徴的な「テクスチャパターン」が存在し、治療反応性が良い患者と反応性が低い患者を区別できることが明らかになりました。

NSCLCでは様々な遺伝子変異などが明らかとなり、その遺伝子変異に対する効果の高い分子標的薬の登場による予後延長が期待されますが、SCLCでは今後も多くのケースで既存の化学療法が選択されるでしょう。SCLCであっても、できるだけその患者に適した、高い効果が得られると期待される治療を提示できるように、このCT画像での予測法、さらにはそのほかの方法も研究が進んでほしいと思います。

SCLCの予後は非常に厳しく、ごく僅かなCR症例以外は、残念ながら初診時から亡くなられるまで診ることが多い印象です。このような知見の積み重ねにより、新たなSCLCに関するバイオマーカーの検索が進み、治療法もブラッシュアップされていくことを願っています。

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文献

1)Frontiers | Novel Non-Invasive Radiomic Signature on CT Scans Predicts Response to Platinum-Based Chemotherapy and Is Prognostic of Overall Survival in Small Cell Lung Cancer, Front. Oncol., 20 October 2021
https://doi.org/10.3389/fonc.2021.744724

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この記事を書いた人

呼吸器内科の勤務医として喘息やCOPD、肺がんから感染症まで地域の基幹病院で幅広く診療している。最近は、医師の働き方改革という名ばかりの施策に不安を抱え、多様化する医師のキャリア形成に関する発信と活動を行っている。また、運営側として関わる一般社団法人 正しい知識を広める会の医師200名と連携しながら、臨床現場の知見や課題感を生かしてヘルスケアビジネスに取り組んでいる。

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