実は効果の高い心臓リハビリ。治療用アプリ開発もますます加速

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実は効果の高い心臓リハビリ。治療用アプリ開発もますます加速――Dr. 呼坂の「デジタルヘルスUPDATE」(44) | m3.com AI Lab

呼吸器診療が専門の総合病院で勤務しつつ、ヘルスケアビジネスにも取り組むDr.心拍氏を中心とするチームが、日々のデジタルヘルスニュースを解説します。

今回は、心臓リハビリの治療用アプリに関する国内企業における開発状況をご紹介します。

皆さんは心臓リハビリと聞いて具体的なイメージが湧きますでしょうか。心臓リハビリの効果はこれまでの研究によって多岐にわたり証明されています[1]。例えば、虚血性心疾患の患者さんが心臓リハビリを行うことで、心血管疾患による死亡率が26%低下し、入院リスクが18%低下します。

また心不全の患者さんが心臓リハビリを行うことにより、行わない場合に比べてあらゆる入院が25%減少し、その中でも心不全による入院が39%減少することが証明されています。さらに心臓リハビリに参加することにより、QOLが改善し快適に過ごすことができるようになります。

その他、心臓リハビリには以下のような効果があります。

  • 運動能力・体力の向上により、日常生活で息切れなどの心不全の症状が軽くなる
  • 筋肉量が増えて楽に動けるようになり、心臓への負担が減る
  • 心機能が良くなる
  • 血管が拡張しやすくなり、血液循環がよくなる
  • 動脈硬化の進行が抑制され、既存の動脈硬化性プラークが小さくなる
  • 血管拡張により高血圧が改善する
  • インスリンがより効果的に働き血糖値が改善する
  • 不整脈の予防になる
  • 運動を行うと仕事や家庭生活、社会生活の満足度が高くなる

私は循環器内科が専門ではないので、「心臓リハビリやっているよ」という話は耳にするものの、内心は「そんなに効果あるの?」と思っていました。しかしながら、ガイドラインなどを確認してその効果に驚いたというのが正直な感想です。

心臓リハビリを専門とする先輩循環器内科医に聞いてみたところ、「循環器内科は心臓カテーテルや経カテーテル大動脈弁治療、アブレーション治療などが表立って華やかにみえるけれど、心臓リハビリの効果は実際に予後を改善させる重要な位置づけなので『縁の下の力持ち』のような存在として頑張っています」ということでした。

そんな心臓リハビリに関して、2つのスタートアップ企業が治療用アプリを開発しています。

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現役医師が開発した、自宅で心臓リハビリできるアプリ

心臓リハビリ治療用アプリなどの開発を行うCaTeは2022年3月10日、シードラウンドとして、J-KISS型新株予約権の発行による1億円の資金調達を2021年12月に実施したと発表しました[2]。

CaTeは、現在も都内病院で循環器内科医として勤務している寺嶋一裕先生が創業されました。運動療法をはじめとした心臓リハビリは治療効果が高いことが証明されているにもかかわらず、日本ではあまり普及していないのが課題としてその解決に取り組んでいます。実際、心疾患患者が退院後心臓リハビリを適切に行うことで心疾患死亡率は低下するにもかかわらず、日本の外来心臓リハビリ参加率はわずか約7%にとどまります。

心臓リハビリが普及していない理由の一つとして、リハビリ施設が少ないことが挙げられます。年間の心不全入院患者数の約29万人に対し、外来心臓リハビリ施設は全国に約700施設しかなく、その多くは都心に集中しています。近年は新型コロナウイルスの感染拡大により、外来心臓リハビリを中止・縮小する医療機関も少なくありません。また、患者とその家族にとっては、リハビリのために通院すること自体が大きな負担になっているとも、寺嶋氏は指摘しています[3]。

通常では、患者は心臓リハビリのために医療機関やリハビリ施設に通いますが、CaTeはこのような背景を受けて、スマートフォンアプリとIoT端末を用いて自宅でも受けられるようにしようとしています。

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出典:https://jp.techcrunch.com/2022/03/11/cate-inc-fundraising/

禁煙アプリで知られるCureAppが慢性心不全治療用アプリの開発を開始

心疾患の治療用アプリに関して、もう一つニュースを紹介します。「治療アプリ」を研究開発する株式会社CureAppが、慢性心不全治療アプリの開発に着手したことを発表しました[4]。

心疾患はがんに続いて日本人の死因第2位。その心疾患のなかでも最も多いのが心不全です。とくに重症化した心不全の生存率はあらゆるがんの生存率よりも低く、予後の悪い病態として知られています。

高齢者には慢性心不全患者が多く、風邪を引いたり肺炎を起こしたりした際に心不全も悪化して緊急入院するというケースが頻発します。高齢化が進むにつれて慢性心不全は今後大きな課題になるのではと感じています。

慢性心不全は治癒せず非可逆的な病態ですから、慢性心不全の増悪を予防するためには、上手にコントロールすることが重要です。そのために運動療法や多職種による疾病管理や心臓リハビリ介入が効果的であり、心臓リハビリにより再入院率が低下するという報告もあります。

こうした課題を解決するために、CureAppは慢性心不全治療アプリを開発しています。禁煙アプリや高血圧治療アプリの開発で培ったノウハウがどう生かされるのか楽しみです。

慢性心不全アプリは、患者用アプリ、医師用アプリ、支援者用アプリ(家族や介護・医療系スタッフなど)の3つで構成され、スマートフォンなどを通じて患者の個別情報をもとに最適化された運動プログラムや疾病管理をオンラインで提供してくれます。

さらに、画像解析技術やIoT技術を活用した非監視下での在宅運動モニタリングシステムを搭載し、患者が安心して在宅運動療法に取り組めるようにすることで、自宅でも包括的に心臓リハビリを実現できるものを目指しています。

とはいえ、実際に患者の立場に立つと、便利なようで常に監視されているという感覚は結構ストレスになるかと思います。安心して取り組める施策があるとよさそうですね。

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出典:https://medicaldx-jp.com/news/295

今回は、心臓リハビリに関する治療アプリの国内企業の取り組みをご紹介しました。とても効果的であることが実証されていながらも、あまり光の当たることが少ない心臓リハビリ。このような治療アプリにより、再入院率減少や死亡率低下に役立つとよいですね。

【参考】
[1]日本心臓リハビリテーション学会
[2]心臓リハビリ治療用アプリなどを開発するCaTeが1億円のシード調達、プロダクト開発と臨床研究を加速
[3]CORAL 自宅で新造リハビリ 現役医師が治療用アプリを開発するワケ
[4]CureAppが慢性心不全治療アプリの開発を開始 | Medical DX (medicaldx-jp.com)

【著者プロフィール】
Dr.心拍 解析・文 (Twitter: @dr_shinpaku)
https://twitter.com/dr_shinpaku
呼吸器内科の勤務医として喘息やCOPD、肺がんから感染症まで地域の基幹病院で幅広く診療している。最近は、医師の働き方改革という名ばかりの施策に不安を抱え、多様化する医師のキャリア形成に関する発信と活動を行っている。また、運営側として関わる一般社団法人 正しい知識を広める会の医師200名と連携しながら、臨床現場の知見や課題感を生かしてヘルスケアビジネスに取り組んでいる。
各種医療メディアで本業知見を生かした企画立案および連載記事の執筆を行うだけでなく、医療アプリ監修やAI画像診断アドバイザーも行う。また、ヘルステック関連スタートアップ企業に対する事業提案などのコンサル業務を複数行い、事業を一緒に考えて歩むことを活動目的としている。

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この記事を書いた人

呼吸器内科の勤務医とライター、ヘルスケアビジネスに取り組んでいる。多様化する医師のキャリア形成とそれを実現するための「複業」に関する発信と活動を行っている。
ヘルスケアに関わる情報発信と人をつなぐことを目的としたメディア「Dr.心拍のヘルスケア最前線」を2024年9月リリース。
肺がんコミュニティや医師キャリアコミュニティを運営。
各種医療メディアで本業知見を生かした企画立案および連載記事の執筆、医療アプリ監修やAI画像診断アドバイザー、また、ヘルステック関連スタートアップ企業に対する事業提案などのコンサル業務を複数行う。
事業を一緒に考えて歩むことを活動目的としている。

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