超聴診器や遠隔聴診システムの研究開発を行うAMI(前編)

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聴診が減少しているコロナ禍において、超聴診器の遠隔聴診に期待

呼吸器・感染症の医師として診療にあたっていると、診察時に頻繁に聴診を行い、その重要性を実感します。例えば、気管支喘息におけるwheezes (笛音)*¹ やrhonchi (類鼾音)*² 、間質性肺炎におけるfine crackles (捻髪音)*³ などは聴診がその疾患を想起させる大切な診察所見になります。また気道閉塞を疑う吸気性のラ音などは瞬時に判断が求められる救急診療において時間のかからない判断の一つとして重要な所見となります。

しかしながら昨年上陸した新型コロナウイルス感染症が猛威をふるうコロナ禍においては、残念ながら、聴診による感染リスクを考慮して、聴診の頻度が減っているのではないでしょうか。他科の先生に聞いてみると、もともと聴診の頻度は少なめだけど、コロナ禍になってからほとんど聴診しなくなった、あるいは、聴診で判断していた部分を画像検査など他の検査で補うようになったなどという声も聞きます。

そんな中、オンライン診療の条件緩和がなされ、遠隔診療などのキーワードも時折臨床医の中にも聞こえてくるようになりました。現在多くの医療ベンチャー企業がデジタルヘルス、遠隔診療に乗り出しています。今回はその中で、臨床医としてとても興味深い事業を行っているAMI株式会社の開発する超聴診器への取り組みについてご紹介させていただきたいと思います。

AMI株式会社は、「急激な医療革新を実現する」をミッションに掲げているスタートアップ企業です。超聴診器(心疾患診断アシスト機能付遠隔医療対応聴診器)や遠隔聴診システムの研究開発を行なっています。2020年にはシリーズAで5.4億円の資金調達を達成、また令和2年度NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)「AIチップ開発加速のためのイノベーション推進事業」に採択されています。さらに、ARIA (Alliance for Revolution and Interventional Cardiology Advancement)、JET (Japan Endovascular Treatment Conference)、日本プライマリ・ケア連合学会、日本遠隔医療学会など学会発表も多数行っています。医療専門職や工学のプロフェッショナルといった多様なメンバーが研究開発に取り組んでいます。

そんなAMI株式会社を一臨床医の私がどのようにして知ることになったのでしょうか。それは現在日本を含む世界中で猛威を振るう、「COVID-19」がきっかけでした。昨年の3月頃より、当院でもCOVID-19患者の受け入れを開始しました。当時は未知のウイルス感染症ということもあり、特に受け入れ1例目は現場の混乱もあり、不安を抱えながら診療を開始したことを覚えています。

(次回に続く)


【脚注】
*¹ wheezes(笛音)
末梢気道の狭小化または圧迫された部位を空気が通る際に生まれる、比較的高調な笛様の雑音。吸気時より呼気時に悪化する笛声様の楽音的な呼吸音である。呼気性喘鳴(wheezing)は、身体所見または症状としてみられ、通常は呼吸困難を伴う。
*² rhonchi(類鼾音)
吸気時または呼気時に聴取される低調な呼吸音である。慢性気管支炎など様々な疾患で生じる。
*³ fine crackles (捻髪音)
断続的な副雑音であり、短く高調な音。


【出典】

この原稿の執筆に際し、掲載企業からの謝礼は受けとっていません。


株式会社シーエムプラス「LSMIP」から許諾を得て転載する。
超聴診器や遠隔聴診システムの研究開発を行うAMI(前編) | LSMIP

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この記事を書いた人

呼吸器内科の勤務医として喘息やCOPD、肺がんから感染症まで地域の基幹病院で幅広く診療している。最近は、医師の働き方改革という名ばかりの施策に不安を抱え、多様化する医師のキャリア形成に関する発信と活動を行っている。また、運営側として関わる一般社団法人 正しい知識を広める会の医師200名と連携しながら、臨床現場の知見や課題感を生かしてヘルスケアビジネスに取り組んでいる。

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