胸部X線から結核を検出するAIは使える?

日経メディカルで掲載された執筆記事の要約を公開します。医師の方は下記URLからお読みください。

胸部X線から結核を検出するAIは使える?:Cadetto.jp (nikkeibp.co.jp)

胸部X線写真から肺結核を検出する人工知能(AI)です。スイスの研究者がバングラデシュの研究者と共同で、商用化されている5つのAIの病変検出能を検討した報告です1)

この研究では、2014年5月から2016年10月にかけて、バングラデシュのダッカにある3つの結核スクリーニングセンターで、15歳以上の患者を対象に行われた調査が報告されています。患者は症状の口頭スクリーニング、胸部X線検査、そして結核菌を検出するためのXpert検査を受けました。

胸部X線画像は、3人の放射線科医と5つのAIアルゴリズムによって独立して解析され、AIの性能が放射線科医と比較されました。その結果、すべてのAIが放射線科医を上回る精度を示しました。特に2つのアルゴリズムは、WHOが定めるトリアージテストの基準(感度90%以上、特異性70%以上)を満たしました。

さらに、AIアルゴリズムは、感度90%以上を維持しつつ、必要なXpert検査の回数を半減させることができました。しかし、60歳以上の高齢者や結核の既往歴がある患者に対しては、AIの性能が低下することも明らかになりました。これは、結核の既往歴がある患者では、古い瘢痕と活動性の病変を区別するのが難しいためです。

バングラデシュは結核の有病率が高いため、AIによるトリアージが有効とされており、日本でも特定の状況で有用である可能性が示唆されています。ただし、日本ではCT検査が一般的であり、AIよりも人間の医師による診断が優先されることが多いとされています。もちろん、既往や病歴の聴取も重要ですから詳細な問診を忘れずに。

文献

1)Qin ZZ, Ahmed S, Sarker MS, Paul K, Adel ASS, Naheyan T, Barrett R, Banu S, Creswell J. Tuberculosis detection from chest x-rays for triaging in a high tuberculosis-burden setting: an evaluation of five artificial intelligence algorithms. Lancet Digit Health. 2021 Sep;3(9):e543-e554.
doi: 10.1016/S2589-7500(21)00116-3. PMID: 34446265.

【著者プロフィール】
Dr.心拍 解析・文 (Twitter: @dr_shinpaku)
https://twitter.com/dr_shinpaku
呼吸器内科の勤務医として喘息やCOPD、肺がんから感染症まで地域の基幹病院で幅広く診療している。最近は、医師の働き方改革という名ばかりの施策に不安を抱え、多様化する医師のキャリア形成に関する発信と活動を行っている。また、運営側として関わる一般社団法人 正しい知識を広める会の医師200名と連携しながら、臨床現場の知見や課題感を生かしてヘルスケアビジネスに取り組んでいる。
各種医療メディアで本業知見を生かした企画立案および連載記事の執筆を行うだけでなく、医療アプリ監修やAI画像診断アドバイザーも行う。また、ヘルステック関連スタートアップ企業に対する事業提案などのコンサル業務を複数行い、事業を一緒に考えて歩むことを活動目的としている。

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この記事を書いた人

呼吸器内科の勤務医とライター、ヘルスケアビジネスに取り組んでいる。多様化する医師のキャリア形成とそれを実現するための「複業」に関する発信と活動を行っている。
ヘルスケアに関わる情報発信と人をつなぐことを目的としたメディア「Dr.心拍のヘルスケア最前線」を2024年9月リリース。
肺がんコミュニティや医師キャリアコミュニティを運営。
各種医療メディアで本業知見を生かした企画立案および連載記事の執筆、医療アプリ監修やAI画像診断アドバイザー、また、ヘルステック関連スタートアップ企業に対する事業提案などのコンサル業務を複数行う。
事業を一緒に考えて歩むことを活動目的としている。

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