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結核副作用のAI予測「診療の一助となるだろう」 | m3.com AI Lab
呼吸器診療が専門の総合病院で勤務しつつ、ヘルスケアビジネスにも取り組むDr.心拍氏が、医療DXに関わるニュースや論文に率直にコメントします。
対象のニュース
抗結核薬には肝障害の副作用がよく知られており、治療中の結核患者には肝機能検査によるモニタリングが必要となる。台湾・奇美医療センターの研究者らは「結核治療による副作用と予後を予測するAI研究」を発表している。(後略)
このニュースに着目した理由
結核は近年も日常臨床で時折経験し、高齢者や合併症が多くまた副作用も複数あることからその治療に難渋することもある。特に自覚症状が乏しい肝障害は頻回な来院と血液検査により早期発見を試みているが患者-医療者ともに負担が大きくなっている現状があり、AIの活用余地がありそうであると感じ、着目した。
私の見解
今回、台湾の3病院における結核患者2248名をもとに、急性肝炎・急性呼吸不全・死亡率を予測するAIモデルを構築している。私自身は普段、入院が必要な結核患者については専門病院に転院しているため、結核による重症呼吸不全や死亡例をそれほど経験していない。また、多くの医療機関では結核を直接診断・治療しておらず専門医のいる医療機関へ紹介している現状がある。それは、結核の診断が非専門医だと難しく、発症から診断まで時間を要することも多いためである。
日常臨床への生かし方
今回のAIモデルを結核診療全体における一つのツールとして活用するには良いかもしれない。専門として結核診療を行う医師にとっては、早期に副作用や急性呼吸不全、死亡率が予測できることは診療の一助となる可能性があると考えられる。一方で、日常臨床において結核診療を行っていない医師にとっては、今回のAIモデルの「良さ」が実感できないかもしれない。個人的には眼症状や神経症状などの副作用についても加えられるとより有用ではないかと感じた。
【著者プロフィール】
Dr.心拍 解析・文 (Twitter: @dr_shinpaku)
https://twitter.com/dr_shinpaku
呼吸器内科の勤務医として喘息やCOPD、肺がんから感染症まで地域の基幹病院で幅広く診療している。最近は、医師の働き方改革という名ばかりの施策に不安を抱え、多様化する医師のキャリア形成に関する発信と活動を行っている。また、運営側として関わる一般社団法人 正しい知識を広める会の医師200名と連携しながら、臨床現場の知見や課題感を生かしてヘルスケアビジネスに取り組んでいる。
各種医療メディアで本業知見を生かした企画立案および連載記事の執筆を行うだけでなく、医療アプリ監修やAI画像診断アドバイザーも行う。また、ヘルステック関連スタートアップ企業に対する事業提案などのコンサル業務を複数行い、事業を一緒に考えて歩むことを活動目的としている。