AIは本当に放射線科読影医の負担を軽減できるのか? 信州大学の事例をもとに

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呼吸器診療が専門の総合病院で勤務しつつ、ヘルスケアビジネスにも取り組むDr.心拍氏が、医療DXに関わるニュースや論文に率直にコメントします。

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胸部CT読影AI「多発性肺転移の拾い上げに重宝」――信州大学医学部附属病院放射線科インタビュー

長野県松本市に位置する信州大学医学部附属病院は、特定機能病院や災害拠点病院として先進的な医療を提供するだけでなく、次代を担う国際的な医療人の育成にも力を注いでいる。2022年9月より、信州大学医学部附属病院は、胸部CT画像から肺結節影を検出する「VUNO Med-LungCT」や胸部X線画像の読影支援を行う「EIRL Chest Screening」といったソフトウェアを導入・活用している。システム構築の中心的役割を果たした放射線科の藤永康成教授および川上聡助教に、医療AI導入の決め手や今後の利用展望について伺った。(後略)

このニュースに着目した理由

実際に胸部CT読影支援AIを導入してみての苦労や課題感、メリット・デメリットに触れており、有用な情報と感じたため着目した。さらに、ふだん読影を行わない非専門医による導入ではなく、読影の専門である放射線科医による導入の取材記事であるため、普段から胸部X線やCTを読影する機会がある私としても興味深く感じた。

私の見解

海外と比較して日本では気軽にCTが撮影できる環境ということもあり、年々読影数が増えている先生も多いだろう。今回、信州大学医学部附属病院放射線科では、導入のきっかけとして以下の2つ挙げている。

① 効率性
② 画像診断管理加算3の認定

これまでは、①を考慮し導入してみたいと思うものの、コスト面で折り合わずなかなか導入できなかった施設が多かったのではないかと思われる。一方で、画像診断管理加算3の認定という後押しにより、今後は徐々にAIの導入も増えていくのではないかと考えられる。

しかしながら、当方が勤務するような一般の病院では②の加算を享受できない。画像診断支援AIは、大学病院のようなハイボリュームセンターよりも、むしろ中小規模の病院やクリニックの方にこそ需要があると思うため、それらの施設への導入の後押しとなる制度設計が今後の課題ではないかと考えられる。

日常臨床への生かし方

とはいえ、ある程度人員がいたとしても、それを上回る読影量を抱える大学病院が、限られた時間と「見落としてはいけない」という精神的な負荷の中で読影をこなすためには、AIは良い支援ツールになると思われる。記事内で藤永先生がおっしゃっている「セカンドリーダー型」から「ファーストリーダー型」へのシフト、これこそが今後の読影AIシステムの大きな展望であり実現が期待されることだと共感を得た。

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この記事を書いた人

呼吸器内科の勤務医として喘息やCOPD、肺がんから感染症まで地域の基幹病院で幅広く診療している。最近は、医師の働き方改革という名ばかりの施策に不安を抱え、多様化する医師のキャリア形成に関する発信と活動を行っている。また、運営側として関わる一般社団法人 正しい知識を広める会の医師200名と連携しながら、臨床現場の知見や課題感を生かしてヘルスケアビジネスに取り組んでいる。

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