AIがCOVID-19患者の回復時間を予測する!?

日経メディカルで掲載された執筆記事の要約を公開します。医師の方は下記URLからお読みください。

AIがCOVID-19患者の回復時間を予測する!?:Cadetto.jp (nikkeibp.co.jp)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の回復時間を予測する人工知能(AI)です。中国の研究者が、入院後48時間以内に収集された治療スキームと患者情報に基づいてCOVID-19患者の回復時間を予測する、iCOVIDと名付けられたAIを検討した報告です1)

この研究は、COVID-19からの回復時間を予測するモデル「iCOVID」の開発と評価を目的としています。これまでの研究は主にCOVID-19患者の重症度や死亡率予測に焦点を当てていましたが、回復時間を予測する試みはほとんどありませんでした。研究チームは2020年2月から3月にかけて中国・武漢の3つの病院で収集した3008人の患者データを用いて、iCOVIDを開発しました。データには治療法、CT画像、臨床的特徴、重症度、患者の転帰などが含まれています。

iCOVIDは入院後48時間以内の患者に対して、回復までの時間を予測するAIで、予測の一致率は約75%(95% CI: 73.6-76.3%)で、平均誤差は4.4日(95% CI: 4.2-4.6日)でした。特に治療法、年齢、症状、併存疾患、バイオマーカーが回復時間予測に強く関与することが明らかになりました。

ただし、このモデルは3つの病院からのデータのみを基にしており、外部検証が限定的であるため、さらなる検証が必要です。また、臨床現場では全ての必要な情報を短時間で収集することが難しい場合があり、この点が課題とされています。しかし、ベースラインで得られる限られた特徴量でも十分な予測精度が達成できることが示されており、特にCT画像がない場合でも性能低下はわずか0.3%に留まりました。

この研究は、実際の臨床に即した形で行われた点や、COVID-19の回復時間を予測するAIとして初めて評価された点で意義深く、今後の診療に役立つ可能性があります。今後、前向き試験によってこのモデルの有効性がさらに確認されれば、効率的な病床管理や診療に貢献することが期待されます。

文献

1)Wang J, Liu C, Li J, Yuan C, Zhang L, Jin C, Xu J, Wang Y, Wen Y, Lu H, Li B, Chen C, Li X, Shen D, Qian D, Wang J. iCOVID: interpretable deep learning framework for early recovery-time prediction of COVID-19 patients. NPJ Digit Med. 2021 Aug 16;4(1):124. doi: 10.1038/s41746-021-00496-3. PMID: 34400751; PMCID: PMC8367981.
https://www.nature.com/articles/s41746-021-00496-3

【著者プロフィール】
Dr.心拍 解析・文 (Twitter: @dr_shinpaku)
https://twitter.com/dr_shinpaku
呼吸器内科の勤務医として喘息やCOPD、肺がんから感染症まで地域の基幹病院で幅広く診療している。最近は、医師の働き方改革という名ばかりの施策に不安を抱え、多様化する医師のキャリア形成に関する発信と活動を行っている。また、運営側として関わる一般社団法人 正しい知識を広める会の医師200名と連携しながら、臨床現場の知見や課題感を生かしてヘルスケアビジネスに取り組んでいる。
各種医療メディアで本業知見を生かした企画立案および連載記事の執筆を行うだけでなく、医療アプリ監修やAI画像診断アドバイザーも行う。また、ヘルステック関連スタートアップ企業に対する事業提案などのコンサル業務を複数行い、事業を一緒に考えて歩むことを活動目的としている。

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この記事を書いた人

呼吸器内科の勤務医とライター、ヘルスケアビジネスに取り組んでいる。多様化する医師のキャリア形成とそれを実現するための「複業」に関する発信と活動を行っている。
ヘルスケアに関わる情報発信と人をつなぐことを目的としたメディア「Dr.心拍のヘルスケア最前線」を2024年9月リリース。
肺がんコミュニティや医師キャリアコミュニティを運営。
各種医療メディアで本業知見を生かした企画立案および連載記事の執筆、医療アプリ監修やAI画像診断アドバイザー、また、ヘルステック関連スタートアップ企業に対する事業提案などのコンサル業務を複数行う。
事業を一緒に考えて歩むことを活動目的としている。

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