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非小細胞肺癌に対する免疫療法の治療効果を予測するAIの実力は? | m3.com AI Lab
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対象のニュース
非小細胞肺癌に対する免疫療法の治療効果を予測するAI研究ー ハーバード大学
進行性/転移性非小細胞肺癌(NSCLC)に対する免疫チェックポイント阻害剤(ICI)単剤治療の効果予測因子として、PD-L1の発現が臨床的に最も使用されているが、予測精度は限定的である。Harvard Medical Schoolの研究チームは、NSCLC患者のHE染色された病理標本から、ICIの有効性を予測するDeep Learning Model(Deep-IO)を開発した。(後略)
このニュースに着目した理由
非小細胞肺癌の治療は免疫療法や分子標的治療薬の登場によって目まぐるしく発展した。現在ガイドラインでは進行性/転移性非小細胞肺癌に対する免疫チェックポイント阻害剤が非常に有用な治療の選択肢であり、重要な薬剤となっている。その治療効果を予測するAI研究ということで着目した。
私の見解
現在治療効果予測にはPD-L1の発現を用いており、実際には同時に提出する遺伝子変異検査と同様に検査提出から1-2週間程度時間を要することが課題に挙げられる。
今回の研究結果は、内部コホートでは遺伝子変異量、PD-L1、腫瘍浸潤リンパ球の3つの予測因子より高く、検証コホートでは腫瘍浸潤リンパ球よりも優れており、PD-L1と同様の結果であった。病理標本から直接予測できるということで効果的な方法だと考えている。
日常診療への生かし方
しかしながら、この病理標本を用いたDeep Learning Modelをすぐに臨床に反映することは難しい。免疫阻害薬による治療効果が得られる患者を効率よく拾い上げられる一方で、内部コホートではAUC=0.75、検証コホートではAUC=0.66と理想的なAUCにはならなかった。
また、実際に使用する場合は国内での臨床試験などの検討も必要ではないかと思う。病状進行が早く、治療導入に至らない患者もいることから、免疫阻害薬の効果を得られる患者に早期に薬剤を届けられる点を評価しており、今後の研究の発展が望まれる。