東洋経済編集部は今年も、資金調達額の大きさや事業・技術の独自性などから有望なベンチャー100社を選定しています。
今回はその中で医療機器・サービスの9社に注目してコメントをしてみました。
㉞HOKUTO
なんといっても今一番医師会員数増加の伸びが凄まじい。2024年2月には医師会員数10万人突破。アプリのUIが素晴らしく、個人的にはがん化学療法副作用を調べるのに「CTCAE」をよく使っている。
最近は製薬の広告出稿が増えてきている印象。打倒エムスリーを掲げているようだが、何か今後差別化できるコンテンツがあると良いだろう。
直近では臨床腫瘍学会との業務提携を発表し、学会との連携についても開始している。
㉟イルミメディカル
名古屋大学発ベンチャーでカテーテルを応用した血管内治療技術である「ET-BLIT」を開発している。肺癌、膵癌、脳腫瘍などのがんや、アルツハイマーなどの神経系疾患、再生医療や遺伝子治療をターゲット疾患にしている。マネタイズまでが結構大変かもしれないが、今後の研究開発の進捗が楽しみである。
㊱ドクターメイト
医師が代表を務める。介護施設における夜間の看護師のオンコール対応サービスと医師への日中のオンライン相談サービスを展開している。医療現場では介護が必要だけど在宅で対応できないということで社会的な入院が急性期病院を圧迫している現実がある。一方で介護施設での医療リソースを考えると今後医療→介護へ注目が集まってくると考えられ、介護領域のDX、IT化に注目している。
㊲Qolo
筑波大学発ベンチャーで立って乗れる車いすを開発している。
確かに、車いす生活になると気持ちが落ち込んでしまう患者さんは少なくない。立って乗れる車いすという発想は非常に興味深い。
㊳BiPSEE
VRうつ病治療システムを開発している。国内では普及率が低い認知行動療法を基盤にVRを用いたアプローチを進めている。
VRでは他にジョリーグッドも「認知症ケア支援VR」を大塚製薬との共同事業FACEDUOで開始している。
㊴Boston Medical Science
「下剤不要のバーチャル内視鏡システム」を開発している。具体的には大腸CT画像から深層学習技術により、腸内の便を消去し、AI技術によりポリープを検出する。
呼吸器領域でも胸部CTから気管支の走行を3Dで再構築し、それをもとに肺の結節までのアプローチの想定に使用したりするが、大腸CT画像からバーチャル内視鏡システムを構築するとのことで高い精度が求められる。大腸内視鏡は患者負担も少なくないため、実現すれば気軽に検査を受ける人も増えるかもしれない。一方で過剰検査が増えないかについても課題感は残る。
㊵HITOTSU
医療業界に特化したチャットツールを提供し、医療DXを手がけている。医療機関への導入を無償にすることで導入ハードルを下げているが、これによりどれだけ効率化できるか次第ではないだろうか。大概の病院DXはうまくいっていない傾向にもあり、保守的な業界でどこまで革命的な改善につながるか。マーケティングにも苦戦しそう。
㊶mairu tech
福祉タクシーや民間救急の予約効率化システムを提供している。
実際患者移送の際に民間救急の手配などアナログでソーシャルワーカーが行っていてその連絡の手間なども大きな課題となっている。ある意味いままでなんでなかったのか?とも思うけれど、医療現場ではこういう1つ1つの課題をITで解決していけると良いと思う。
㊷YStory
女性更年期のセルフケアアプリを開発している。フェムテックが拡がってきているが、実際診療していても更年期で悩む方は多い印象。一方で女性だけでなく、男性更年期にも注目し、両方カバーできるようになると良いと思う。
さて、今回は9社をとりあげて医師目線、医療現場目線からコメントしました。あったらよいよね、から脱却し、しっかり事業継続できると良いなと思っています。