COVID-19後遺症に関わる蛋白質をAIが予測し、示した既存治療薬候補とは

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COVID-19後遺症に関わる蛋白質をAIが予測し、示した既存治療薬候補とは:Cadetto.jp (nikkeibp.co.jp)

 今回紹介するのは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の合併症あるいは回復後に持続的な後遺症状を抱える患者(いわゆるLong-COVID)において、その原因としての蛋白質伝達経路との関連を予測するAIベースのツールに関する研究の報告です1)

COVID-19からの回復後、多くの患者が息切れや胸痛、倦怠感、味覚・嗅覚障害、脱毛などの症状に悩まされており、その治療法はまだ確立されていません。この背景から、米ジョージア工科大学の研究グループが、後遺症の原因となる分子メカニズムを予測するAIツール「MOATAI-VIR」を開発しました。このツールは、COVID-19に関連する蛋白質経路に作用する薬剤をリストアップし、ドラッグリポジショニング(既存薬の新しい適応を見つけること)に役立てることを目指しています。

研究では、既にFDAから承認されている薬剤の中から、プレドニゾロンやベタメタゾンといった馴染みのある薬剤だけでなく、ビンデシンやポマリドミド、テマゼパムといった新しい候補も特定されました。これにより、既存薬を活用することで、新たな治療法開発にかかる時間とコストを大幅に削減できる可能性があります。

COVID-19の後遺症に関する研究は、依然として多くの未知が残されており、これからの課題です。後遺症に苦しむ患者が日常生活で直面する困難さを考えると、早期の治療法の確立が強く求められています。

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文献

1)Prediction of severe adverse events, modes of action and drug treatments for COVID-19’s complications, Scientific Reports
https://www.nature.com/articles/s41598-021-00368-6

2)MOATAI-VIR(gatech.edu)
https://sites.gatech.edu/cssb/moatai-vir/

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この記事を書いた人

呼吸器内科の勤務医として喘息やCOPD、肺がんから感染症まで地域の基幹病院で幅広く診療している。最近は、医師の働き方改革という名ばかりの施策に不安を抱え、多様化する医師のキャリア形成に関する発信と活動を行っている。また、運営側として関わる一般社団法人 正しい知識を広める会の医師200名と連携しながら、臨床現場の知見や課題感を生かしてヘルスケアビジネスに取り組んでいる。

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