iPS細胞がもたらすがん免疫療法への革命

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呼吸器診療が専門の総合病院で勤務しつつ、ヘルスケアビジネスにも取り組むDr.心拍氏が、医療DXに関わるニュースや論文に率直にコメントします。

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対象のニュース

iPS細胞からがんを攻撃するガンマ・デルタ T細胞を作製

神戸大学の研究チームは、ヒトiPS細胞から、ガンマ・デルタT細胞を作製することに成功した。ガンマ・デルタ(ɤδ)T細胞は、さまざまな種類のがん細胞を攻撃し、患者本人以外から採取したものであってもがん細胞を攻撃できる特質を持つ。(後略)

このニュースに着目した理由

ひと昔前まで、「がん免疫療法」と聞くと怪しい治療というイメージがあった。実際、怪しいものも多く存在するが、一方で研究としてがん免疫療法はこの十数年で飛躍的に発展してきた。今回iPS細胞を用いた「ガンマ・デルタT細胞」が作製されたということで、今後のがん免疫療法の発展に貢献できる可能性があり着目した。

私の見解

私が普段診療している肺がんにおいては、がん免疫療法として「抗PD-L1抗体」や「抗PD-1抗体」が使用されている。目まぐるしく変わる化学療法においてこれらの薬剤は欠かせない治療薬となっている。今回、iPS細胞からガンマ・デルタT細胞を作製するだけでなく、元の細胞の提供者以外でも大腸がん細胞、肝がん細胞、白血病細胞を攻撃することが確認できたことから、「他人」のがんの治療にも有効な可能性があるということで今後の研究結果が期待される。

日常臨床への生かし方

ガンマ・デルタT細胞はがん細胞を攻撃する特性をもつ一方で体外での培養・増幅に課題があった。iPS細胞を用いるという今回の研究によってそれを克服できる可能性があり非常に興味深い。

現状、すぐに実臨床に生かせるレベルではないものの、基礎研究でのしっかりとした裏付けと他人への効果には期待できる。今後、通常の治療薬と同じようにガンマ・デルタT細胞も流通可能な製造ができるとなれば、多くのがん免疫療法において新しい知見をもたらしてくれる可能性がある。

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この記事を書いた人

呼吸器内科の勤務医として喘息やCOPD、肺がんから感染症まで地域の基幹病院で幅広く診療している。最近は、医師の働き方改革という名ばかりの施策に不安を抱え、多様化する医師のキャリア形成に関する発信と活動を行っている。また、運営側として関わる一般社団法人 正しい知識を広める会の医師200名と連携しながら、臨床現場の知見や課題感を生かしてヘルスケアビジネスに取り組んでいる。

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