AIによる気胸検出「非専門医にとってはすぐにでも役立つのでは」

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AIによる気胸検出「非専門医にとってはすぐにでも役立つのでは」 | m3.com AI Lab

呼吸器診療が専門の総合病院で勤務しつつ、ヘルスケアビジネスにも取り組むDr.心拍氏が、医療DXに関わるニュースや論文に率直にコメントします。

目次

対象のニュース

AIによる気胸検出

米マサチューセッツ総合病院や豪シドニー大学などの共同研究チームは、Annalise.ai社が提供する気胸検出AIについて、その性能を検証している。研究成果は15日、JAMA Network Openから公開された。チームの研究論文によると、評価対象となったのは「Annalise Enterprise CXR」システムで、75万枚を超える胸部レントゲン写真から学習し、100種を超える画像所見を識別できるもの。(後略)

このニュースに着目した理由

気胸の有無は救急外来などでもよく遭遇する。呼吸器内科医などの専門医が見ると見落とすことはほとんどないが、他科の医師だと判断が難しいという声をよく聞く。胸部単純X線1枚で診断の有無が決まることもあり、その診断をAIで検出するというこの記事に着目した。

私の見解

今回の研究論文では、75万枚を超える胸部X線写真から学習し、100種を超える画像所見を識別できるものであるという。臨床では特に、緊張性気胸であれば致死的となりうるため、すぐに脱気することが求められる。そのため今回の研究では、非緊張性気胸307例、緊張性気胸128例、気胸なし550例を含む985例のX線写真を対象とした検証を行っており、そのAIモデルは感度・特異度ともに90%を超えるということで非常に有能なAIモデルではないかと考える。

日常臨床への生かし方

日常臨床においては、

  • 他科で全身麻酔下の術前でたまたま撮影した胸部X線での気胸の早期発見
  • 救急外来での外傷患者など緊急性の高い患者の胸部X線での早期緊張性気胸の発見

などで、このAIモデルが生かされると考えられる。また、人工呼吸管理中の患者さんでは、陽圧換気による医原性気胸も起こりやすく早期発見が必要と考えられ、AIモデルによる早期発見がその後の臨床的転帰にも良い影響を与える可能性があり、導入が効果的なのではないかと考えられる。

【著者プロフィール】
Dr.心拍 解析・文 (Twitter: @dr_shinpaku)
https://twitter.com/dr_shinpaku
呼吸器内科の勤務医として喘息やCOPD、肺がんから感染症まで地域の基幹病院で幅広く診療している。最近は、医師の働き方改革という名ばかりの施策に不安を抱え、多様化する医師のキャリア形成に関する発信と活動を行っている。また、運営側として関わる一般社団法人 正しい知識を広める会の医師200名と連携しながら、臨床現場の知見や課題感を生かしてヘルスケアビジネスに取り組んでいる。
各種医療メディアで本業知見を生かした企画立案および連載記事の執筆を行うだけでなく、医療アプリ監修やAI画像診断アドバイザーも行う。また、ヘルステック関連スタートアップ企業に対する事業提案などのコンサル業務を複数行い、事業を一緒に考えて歩むことを活動目的としている。

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この記事を書いた人

呼吸器内科の勤務医として喘息やCOPD、肺がんから感染症まで地域の基幹病院で幅広く診療している。最近は、医師の働き方改革という名ばかりの施策に不安を抱え、多様化する医師のキャリア形成に関する発信と活動を行っている。また、運営側として関わる一般社団法人 正しい知識を広める会の医師200名と連携しながら、臨床現場の知見や課題感を生かしてヘルスケアビジネスに取り組んでいる。

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