次世代救急医療体制の構築を目指す、TXP Medical(前編)

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幅広いプロジェクトで医療へ貢献

救急医療を行う勤務医として、時間外や夜間に軽症から救急搬送される重症患者まで対応するのは大変な激務の一つになります。私は救急医ではありませんから、常に救急外来を担当しているわけではありませんが、当番の夜には、これまで受診歴のない患者さんの対応を行うことがしばしばあります。今日はどんな症状で来院されましたか?から始まり、これまでの病気や飲んでいる薬の確認など、ゼロからの問診は時間がかかります。そうこう言っている間に、同時に救急搬送された重症患者さんの対応をおこなわなければならず、重症者ではバイタルサインの変調により、ゆっくり問診している時間もないまま、すぐに診察、検査、診断、治療へと進んでいかなければなりません。患者さん本人に問診している間に具合が悪くなることも十分にありえますし、ご家族にこれまでのご病気をお聞きしている間に急変することもある世界なのです。

そんな救急医療の現場にテクノロジーで変革をもたらすベンチャー企業のTXP Medical株式会社があります。代表取締役の園生智弘氏は10年以上救急医療に携わった経験があり、まさに現場の医師が作り上げる次世代救急医療体制の実現を成し遂げようとしています。

TXP Medicalが展開するサービスは幅広く提供しており、主に以下内容となります。

  • 救急におけるカルテ入力業務支援と研究支援を両立する統合プラットフォーム
  • 救急患者受け入れ促進と音声入力などの先進技術活用で働き方改革を実現するツール
  • 音声コマンド入力や画像解析技術を盛り込んだ救急医療現場でのリアルタイム記録と電子カルテへのシームレスな情報連携を実現する未来型スマホアプリ
  • JTAS(Japanese Triage and Acuity Scale=緊急度判定支援システム)に基づいた救急
    トリアージの実施や加算の算定、トリアージの振り返り機能をまとめたオプションツール
  • セルフ問診システム

それ以外にもリサーチチームが存在し、プロダクトの開発だけでなく学術研究を行い、企業とアカデミアの融合を目指しています。

https://youtu.be/PiNXqlhXM_s?si=cnFBG71pbu8cZfmn
(出所:TXP Medical株式会社)

2021年7月5日のプレスリリースで鎌倉市及び鎌倉市医師会と「次世代救急医療体制の構築に向けた実証事業の実施に関する協定」を締結したことが発表されました。TXP Medicalが提供するシステムを活用し、救急隊と救急搬送先の病院とのマッチングを迅速に行い、搬送先選定時間の短縮を目指すという試みです。

救急隊は、今まで救急搬送先決定のための患者情報を病院へ電話のみで説明していましたが、AI技術の活用により音声からデータ化した患者情報と、バイタルや患部の画像データを病院へ送信することが可能となります。病院側は、救急隊から送信されたデータをもとに、救急患者の症状を直ちに把握し、迅速に受け入れの可否を判断できるようになります。また、データは病院の電子カルテに反映することができます。

さらに、コロナ禍においては、以下内容の幅広いプロジェクトで医療へ貢献しています。

  • COVID-19セルフ問診アプリの提供やCOVID-19救急サポートプロジェクト
  • NPO法人日本ECMOnetの提供する重症COVID-19データベース「CRISIS」について開発管理、見える化をするためのWebサイトの構築
  • 徳島県における新型コロナウイルス感染症患者の入院調整業務の円滑化を支援

(次回に続く)


【出典】

  • TXP Medical 株式会社 ウェブサイト https://txpmedical.jp/
  • TXP Medical 株式会社 ニュース 「救急医療提供体制支援「COVID-19救急サポートプロジェクト」スタート 〜疲弊する救急医療現場の業務負担軽減へ時限的無料提供開始〜」 2021/02/08 https://txpmedical.jp/news/1cXYHfdTT2oFLb4HwhR7UQ
  • TXP Medical 株式会社 プレスリリース 「TXP Medicalが徳島県に向けて新型コロナ情報共有システムを提供開始 〜新型コロナウイルス感染症患者の入院調整業務の円滑化を支援します〜」 2021/06/29 https://txpmedical.jp/news/24jLcWi01lCPS2Q7RtBrJ
  • TXP Medical 株式会社 プレスリリース 「TXP Medical×鎌倉市×鎌倉市医師会 次世代救急医療体制の構築に向けた事業を実施します」 2021/07/05 https://txpmedical.jp/news/5XehFdhCJvf6EKGk2mGtf9

この原稿の執筆に際し、掲載企業からの謝礼は受けとっていません。


株式会社シーエムプラス「LSMIP」から許諾を得て転載する。
次世代救急医療体制の構築を目指す、TXP Medical(前編) | LSMIP

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この記事を書いた人

呼吸器内科の勤務医とライター、ヘルスケアビジネスに取り組んでいる。多様化する医師のキャリア形成とそれを実現するための「複業」に関する発信と活動を行っている。
ヘルスケアに関わる情報発信と人をつなぐことを目的としたメディア「Dr.心拍のヘルスケア最前線」を2024年9月リリース。
肺がんコミュニティや医師キャリアコミュニティを運営。
各種医療メディアで本業知見を生かした企画立案および連載記事の執筆、医療アプリ監修やAI画像診断アドバイザー、また、ヘルステック関連スタートアップ企業に対する事業提案などのコンサル業務を複数行う。
事業を一緒に考えて歩むことを活動目的としている。

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